1カ月に1千万円以上の高額の医療費がかかった件数が近年大きく増えています。高度な技術を使って開発された治療薬は金額も高くなる傾向があり、そうした新薬への公的保険の適用が相次いでいることが背景にあります。患者1人あたり1カ月の医療費が1千万円以上の件数は、2022年度に1,792件で、前年度から275件(18%)増えて過去最多となっています。
2022年度分のレセプトで、1カ月の医療費の最高額は1億7,784万円です。上位100件のうち1億円を超えたのは、これを含めて9件でありました。いずれも指定難病の脊髄性筋萎縮症の治療で、2歳未満の患者に1回点滴するゾルゲンスマ(1患者あたり約1億6千万円)が使用されています。また、上位100件のうち、従来の治療がきかなくなった白血病患者らに使われるキムリア(1患者あたり約3千万円)の使用も63件にのぼっています。
医療の高度化は、高齢化とあいまって国内全体の医療費も押し上げています。2022年度の概算医療費は、過去最高の46.0兆円に達しています。10年前から7.6兆円増えています。75歳未満の1人あたり医療費も、この10年で年4万円超え増えています。医療費を押し上げる要因となっているのは、高額な薬の登場です。
健康保険組合には、大企業の会社員やその家族が加入しています。企業とその社員が折半して納める保険料を原資に、加入者の医療費を保険給付で支払っており、加入者は自己負担額が3割で済みます。また高額療養費制度で、自己負担額は一定の上限額に抑えられ、この不足分も健保側が賄っています。健保連は高額な医療費の支払いで、2022年度の決算では、全国の健保組合の4割が赤字になる見通しです。
(2023年9月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)