1997年に臓器移植法が施行され、20年が経過しました。年々増加の傾向にありますが、諸外国に比べて目立って少ない状況です。2016年は64件ありましたが、100万人あたりの提供者数は0.7人であり、スペイン39.7人に比してかなり少なくなっています。内閣府の2013年の調査によれば、脳死となった場合に、「提供したい」「どちらかといえば提供したい」という人は43.1%であり、15年前より10ポイント以上増加しています。20歳代は63.9%、30歳代55.9%と若い世代で半数を超えています。
貴重な意思が生かせない背景には、体制整備の遅れがあります。脳死での臓器提供ができる病院は約900施設ありますが、今年3月時点の国の調査によれば、実際には半数以上で体制が整っていません。国民の意識の変化に、社会システムが追いついていない状況にあります。尊い意思を大切にできる体制作りが急務です。
(2017年10月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)