自死遺族が直面する問題

 自死遺族は、大切な人を自殺(自死)で失っただけではなく、多くの問題に直面します。自死があった賃貸物件には、心理的瑕疵があるとして、貸し手は次の借り手に契約前に伝える必要があります。その結果、借り手がつきにくくなり、ある程度の家賃補償は請求せざるを得ない状況にあります。しかし、補償額に明確な基準はありません。遺族自身が自死を知られたくないと思ったり、体力、気力がなかったりして、言われるがまま支払ってしまうケースも相当数あります。
 周囲の対応でさらに心に傷を負う遺族も多くなっています。自死だからと2カ所の寺に葬儀を拒否され、教会で葬儀をした場合もあります。遺族が集まる場で行政職員に「死ぬくらい嫌な仕事なら、辞めれば済む」と言われるようなこともあります。通夜や葬儀中にも警察に配慮無く呼び出されて10回以上事情を聴かれたケースもあります。病死などに比べ、自死が疎まれ、遺族に対する差別意識が生まれていることが背景にあります。

(2018年1月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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