わが国では、戦後の経済的な発展とともに妊婦の栄養状態はよくなり、出生体重2,500g未満の児、低出産体重の割合は低下してきました。しかし、1970年代後半から増加し始めており、現在では約1割(平成24年:9.58%)までに達しています。その原因としては、若い女性のやせ願望が妊娠しても継続していることが考えられます。
英国のBarkerは、出生体重の低下と心筋梗塞の発症リスクが密接に関係していることを見出し、妊娠中の低栄養は、児の生活習慣発症のリスクを高めるという考え方を提唱しました。その後、大掛かりな疫学調査が行われてきており、出生体重の低下は、虚血性心疾患,糖尿病,脂質異常症等の生活習慣病,精神発達異常等のリスクも高くなることが明らかになっています。現代の妊婦の栄養状態は摂取エネルギ-が不足しており、出生体重の低下傾向は、若い女性のやせ志向によるものと思われます。若い女性と次世代の児の健康のために、食育を通して栄養・食習慣の重要性を共有していかねばなりません。
(日医雑誌 143:RS-283-RS-284,2015)
(吉村 やすのり)