内閣府のミニ白書によれば、25~34歳で労働所得の格差が拡大する傾向にあるとされています。背景に男性の非正規雇用比率の高まりがあるとされています。単身世帯の所得が伸び悩み、若年層は結婚して子どもを持つという選択が難しくなっていると思われます。
数値が大きいほど所得の格差が大きいことを示すジニ係数について、25~29歳は、2002年の0.240から2017年は0.250に上昇し、30~34歳も、2002年の0.311から2017年は0.318に上がっています。年齢階層別に計算すると、若年層で労働所得の格差が広がっています。男性の非正規雇用の比率が上昇し、労働時間が減少していることが関係しています。
総務省の調査によれば、単身世帯の所得の中央値は2014年と2019年で比べると360万円で変化がなく、300万円台の世帯がもっとも多く、結婚しない人や晩婚化が進み、単身世帯そのものが増えています。夫婦のみの世帯を見ると、共働きの夫婦が増えたことで中央値は、2014年の535万円から2019年の616万円に上昇しています。夫婦と子どもがいる世帯も、2014年の493万円から2019年は550万円まで増加しています。500万円未満の層の割合が大幅に低下する一方、800万円以上の割合が上昇しています。500万円未満の世帯では、子どもを持つ選択が難しくなっていることがうかがえます。
所得が伸びない若年層が結婚をためらい、結果として少子化が進む可能性があります。結婚後の出産や子育て支援だけでなく、未婚化を防ぐかどうかが少子化対策につながります。
(2022年2月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)