現在の若者たちの未婚化、晩婚・晩産化が少子化につながっています。2008年に1億2,808万人でピークを打った日本の人口は下がり始めたばかりです。しかし、本格的な減少はこれからです。いわばジェットコースターの頂上からの急降下が待っています。何も手を打たなければ、人口は2058年に1億人を割り、2110年に約5,300万人まで減ってしまいます。人口減少のスピードがあまりに急激すぎて、有効な対策が打てないままの状況にあります。
若い世代の人々も、この人口減少、超高齢化社会の到来、社会保障の未来に不安を抱いています。若い世代が、妊娠、出産、子育てに踏み込まないのは、一種の現代社会に対するレジスタンスなのかもしれません。政府は財政健全化の目標をないがしろにしているし、国債市場、株式市場の支え役と化した日本銀行は異次元緩和をやめていません。このような今日さえ良ければそれで良いとする刹那的な経済政策が、日本の将来を危うくし、若者の希望を奪っているともいえます。
人口減対策は、社会保障、都市政策、雇用政策、地方行政などがありとあらゆる政策がからむ連立方程式です。地方における若者に対する雇用や医療の提供体制の確保、行政の支援がなくして、出生率の向上は望めません。子育て世代が共稼ぎをしながら産み育てられるようにすることが、少子化の危機を乗り切るために欠かせない条件です。東京のような巨大都市では難しい時代がきています。しかし、全国の中核都市に人口が分散していけば可能かもしれません。総合的に数十年がかりで粘り強く取り組まないと解決できない問題です。政府と国民の強い決意も必要となります。
(吉村 やすのり)