葬儀の簡素化

 厚生労働省によれば、2023年時点で平均寿命は男性が81歳、女性が87歳です。故人が高齢ならその知人も高齢で、葬儀への参列が難しい人も多くなっています。結果、近親者のみで見送る家族葬が増えています。鎌倉新書の統計によれば、2015年に実施件数で59%を占めていた一般葬は、新型コロナウイルスの流行もあって2024年に30%まで減少しています。代わって家族葬が50%と、一般葬を抜いて最も多くなっています。

 葬儀代の平均単価も下がっています。経済産業省の調査によれば、2024年の葬儀1件あたりの売り上げは平均121万円です。2000年以降で最も高かった2006年の152万円と比べて2割安くなっています。背景には、参列者の少ない家族葬や通夜をしない一日葬など、簡素な葬儀の増加があります。平均費用は一般葬で161万円、家族葬で105万円程度です。

 多死社会の日本で、葬儀の市場は拡大しています。厚生労働省によると2024年の死亡数は160万5,298人で、2000年比で67%増えています。国立社会保障・人口問題研究所は、2040年に死亡数がピークの167万人を迎えると推計しています。今後15年程度は葬儀の件数も増える見込みです。簡素で安価な葬儀が増える中、介護や相続など人生のエンディングを一貫して支えるサービスへと展開できるかが、葬儀ビジネスのカギを握っています。

(2025年6月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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