薬剤性耐性菌の拡大

 抗菌薬は細菌の表面や内部にある標的に結合することで作用します。しかし、薬の効きにくい耐性菌が生じることがあります。原因の一つは、本来不要な場面で抗菌薬を使ったり、症状が良くなって服薬をやめたりしてしまうことです。薬にさらされた細菌は性質を変えて生き残ろうとします。薬の効かない菌が増えると感染症が治りにくくなってしまいます。

 抗生物質などが効かない薬剤耐性菌が広がっています。世界の死者数が2050年に1,000万人となり、現在のがんの死者数と同規模になるとの推計もあります。免疫力の弱い高齢者や乳幼児らが重症化しやすく、高齢化が進む日本で、知らぬ間に拡大するサイレントパンデミックが大きな脅威となるかもしれません。

 1928年にアレクサンダー・フレミングが世界初の抗生物質であるペニシリンを発見して以降、抗菌薬が開発されると、それに耐性を持つ菌が生まれるといういたちごっこが続いています。製薬会社は耐性菌に効く新薬の開発に取り組んでいます。

 まず、感染症に罹らないよう手洗いや咳エチケットなどの基本的な感染対策をすることが大切です。抗菌薬を使う機会を減らせば、細菌が薬にさらされずに済みます。必要な時以外は抗菌薬を使わないことも重要です。例えば風邪は主なウイルスによって引き起こされるため、抗菌薬を飲んでも意味がありません。むしろ体内に無害な菌を退治して耐性菌を増殖させる可能性があります。

(2026年3月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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