厚生労働省によれば、年間の国民医療費約42兆円のうち、薬剤費は4分の1の約10兆円を占めています。がん治療薬は、約1兆2,000億円(2018年)に上り、前年比10%前後の伸びが続いています。ここ20年で新しいがん治療薬が次々と登場し、昨年発表されたがん全体の5年生存率は70%に迫っています。しかし、新薬が画期的であるほど価格も高騰します。長寿に伴って2人に1人が、がんになる時代に、そうした新薬は医療財政の重荷になりつつあります。
膨らむ薬剤費を問題視する声は大きくなってきています。厚生労働省は、必要に応じて薬価を切り下げて対応するとの立場です。世界的に見れば、日本のように、いったん承認すれば、どんなに高額であっても、原則すべての新薬に保険適用を認める国は異例です。英国のように、延命効果とコストを考慮する指標を使い、費用対効果が良くない薬には、保険を適用しない仕組みを考える必要があります。
(2019年3月28日 読売新聞)
(吉村 やすのり)