京大病院は、10代の女性患者に対し、血液型が異なる父親の肺の一部を移植する手術を実施しました。血液型が適合しないケースの生体移植は、肝臓や腎臓では既に実施されていますが、肺では世界初です。患者は既に退院し、経過は良好ということです。
患者は、肺の病気である閉塞性細気管支炎を発症し、肺移植でしか助からない状況で、患者の体格から両親の肺の一部をそれぞれ提供してもらう必要がありました。両親はいずれも40代で、母親は患者と同じO型でしたが、父親はB型でした。患者には事前に免疫抑制剤を投与し、免疫を担う抗体が移植された肺を攻撃しないようにし、血中の抗体を取り除く措置もしています。
肺は構成する細胞の種類が多いことなどから、他の臓器より拒絶反応が起きやすいとされています。また外気を取り入れるため感染症を起こしやすいとされ、血液型不適合のケースで生体移植は行われてきませんでした。臓器提供者と患者の血液型の組み合わせによっては、移植後に免疫による拒絶反応で臓器が機能しなくなるため、免疫抑制剤を使うなど特別な治療が必要となります。血液型不適合の生体移植が肺でも可能になり、治療の幅が広がります。
(2022年4月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)