裁量労働制の対象拡大へ

労働基準法は、労働時間を原則として1日8時間、週40時間までと定めています。裁量労働制は、この規則を前提として、労使で話し合ってみなし労働時間を定めています。裁量労働制には、①研究者やシステムエンジニア、弁護士など19種類の業務に適用される専門業務型と、②企業の本社で経営計画を立案する社員などが対象の企画業務型の2種類があります。

裁量労働制を活用すれば、労働者は自分のペースで効率的に働いて生産性を高め、空いた時間は自己啓発などで有意義に使えます。だらだらと長く残業する従業員のほうが、高い給与を得られる不合理も是正されます。しかし、対象業務が限定されることなどから、裁量労働制の適用を受ける労働者の割合は専門業務型が1.0%、企画業務型が0.2%にとどまっています。
厚生労働省の調査によれば、裁量労働制が適用されている労働者の1日の平均労働時間は9時間で、そうでない人より21分長くなっています。さらに、仕事内容と量について、自分に相談なく上司が決めていると答えた人が約7%います。仕事の具体的な達成目標などを、労働者本人が関与して決められるとは限らないことがうかがえます。
経営者が残業代を減らそうとして、裁量労働制を使う実態もあります。仕事の絶対量が過大だと、結局は長時間労働につながります。対象を拡大するのであれば、働き過ぎの防止策も講じるべきです。

 

(2021年9月24日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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