裁量労働制の必要性

政府が今国会の最重要法案と位置づけていた働き方改革関連法が成立しました。日本の一般労働者の労働時間は、年間で2,000時間を超え、横ばいが続いています。日本の労働法規制で初めて導入される上限規制は、こうした日本型の雇用慣行を大きく見直す転機になりそうです。今の枠組みでは、だらだらと時間を費やして働いた人の方が、賃金が高くなります。そのため短時間で効率よく働いた人に報いる賃金体系を確立する必要があります。

多様な働き方を認め、生産性を上げるために、裁量労働制の導入が考えられています。裁量労働制は、あらかじめ決めた時間だけ働いたとみなす制度です。現在、専門型と企画型があります。専門型は弁護士や研究職、大学教授など専門的な知識や技術を求められる職種です。企画型は経営の中枢で立案や調査、分析など発想力が求められる業務です。対象者は2つ合わせて数十万人にのぼります。当初の法案では企画型の対象に、一定の専門知識を持ち顧客の経営課題を解決する提案型の営業職を加える予定でした。しかし、野党の裁量労働拡大の対象の拡大が長時間労働につながるとの反対により、また厚生労働省のデータ不備により、法案は成立にいたりませんでした。
そもそも裁量労働制は労働時間の短縮を目的としたものではありません。だらだらと職場に残るのではなく、効率よく働いて生産性を高めるはずの制度です。わが国の労働生産性は、主要7ヶ国の中でも最下位です。わが国においては、雇用形態で賃金制度を分ける企業が多くなっています。一方、欧米では、仕事の中身に応じて賃金を払う職務給制度が定着しています。人口が減る中、一人ひとりの生産性を高めることが必要となります。

(2018年7月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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