国土交通省によれば、視覚障害者の転落事故は2014年度からの10年間で計611件に達しています。このうち車両と接触したケースは20件ありました。視覚障害者が転落し電車と接触するなどの事故が後を絶たないなか、全国の駅ホームドアの設置数は1割程度にとどまっています。
全国の駅でホームドアが整備されているのは、1,129駅の2,647カ所と1割程度です。国土交通省は2025年度までに3,000カ所に拡充したいと考えていますが、導入には1駅あたり数億~十数億円のコストがかかるため、鉄道会社側の負担も大きくなっています。ホームドアが全国で整備されるまでの対応策として、鉄道各社はテクノロジーを駆使した安全確保に力を入れています。
AIを活用して、改札口のカメラ映像をもとに白杖や車椅子の利用者を認識し、駅員に通知するシステムの導入が進んでいます。視覚障害者に白杖の適切な使い方や安全に乗り降りする方法を伝えるプログラムも考えられています。

(2025年5月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)