京都府立大学らの研究グループは、角膜が濁って視力が大幅に下がる水疱性角膜症の治療に培養した他人の角膜内皮細胞を移植し、視力改善などの効果を確認できたことを発表しています。この病気は、角膜を透明に保つ角膜内皮細胞が病気や怪我で傷つくなどして発症します。国内に約1万人の患者がいると推定されていますが、現在は角膜移植しか治療法がありませんでした。
若いドナー角膜より角膜内皮細胞を取り出し、培養して増殖させ、角膜の内側から変性に陥った細胞を取り除き、そこに培養した内皮細胞を移植し、定着させるという方法です。2013年12月以降、水疱性角膜症の患者35人に培養した細胞を移植する臨床研究を行ってきました。うち40~80代の11人について2年間調べた結果、全員の角膜が透明になり、視力が改善しました。拒絶反応や感染症、重い副作用はみられませんでした。この手法は1人の角膜提供者から100人分に細胞を培養して増やすことができ、効率が良いとされています。
(2018年3月15日 朝日新聞)
(The New England Journal of Medicine March 15, 2018)
(吉村 やすのり)