厚生労働省と財務省は、2018年度予算編成で、医療行為や薬の対価として医療機関が受け取る診療報酬をマイナスにする方針にしています。薬の公定価格である薬価を大きく下げ、同時に医師の人件費と合わせた報酬全体を引き下げます。政府は、2018年度予算で何もしなければ6300億円と見込む社会保障費の伸びを5千億円増に抑える方針です。1,300億円のうの多くを薬価下げによる診療報酬の引き下げでまかなう予定です。
年間の医療費の総額は、40兆円規模にまで膨らんでいます。診療報酬を1%下げれば、国の負担は約1,000億円抑えられます。医師の人件費にあたる本体部分は、日本医師会が全国の医療体制を保つためにプラス改定とするよう求めています。全体のマイナス改定が固まったのを受け、医師の人件費の見直しが焦点となります。薬価の引き下げに頼る形になれば、製薬業界から反発がでる可能性もあります。国の予算に占める医療の割合は増加しています。高齢化で増える医療費の伸びを抑えなければ、財政運営はますます難しくなります。
(2017年10月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)