診療報酬制度の見直しを

国民皆保険の日本では、有効性が確認された治療や薬は保険が適用され、低負担で医療を受けられます。その医療費の原資は、税金と保険料が大半を占めています。近年、1回数千万円もの高額治療薬が登場し、保険財政を圧迫しています。診療報酬の無駄を見過ごす余裕はありません。
現状は不可解な仕組みが残っています。ベテラン医師と新人医師でも、同じ診療行為なら一部を除き診療報酬に差はありません。プラスアルファのサービスを提供しても、診療報酬に規定がなければ、費用を回収できません。結局、横並びが有利となり、競争や経営努力を促しにくい状況にあります。
入院では在院日数や検査、投薬の回数にかかわらず、報酬を定額にする包括払い制度があります。早く治して退院させた方が利益が増えます。効率よく治療するインセンティブとなります。しかし、外来に同様の仕組みはなく、検査や投薬をするほど報酬が増える出来高払いが基本となっています。
本来は治療成績や質を評価し、報酬を増減しても良いはずです。せめてデジタル化などで効率を高める努力を促すような仕組みにすべきです。大きな病気になった時、誰でも治療を受けられる安全網を守るためにこそ、持続可能な報酬体系が欠かせません。

(2022年5月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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