認知症に対するゲノム医療

一人ひとりの遺伝情報を調べて治療につなげるゲノム医療が、認知症の多くを占めるアルツハイマー病にも広がりつつあります。がんでは原因遺伝子を見極めて有効な薬などを探すのに対し、アルツハイマー病では、まず患者の早期発見などに役立つと期待されています。
ゲノム医療で先行するがんでは、多数の遺伝子変異を調べ、効果が高い治療法を選ぶために用います。認知症にゲノム医療を適用する利点は、確実な診断に役立つことです。アルツハイマー病のうち、遺伝性タイプは5%以下です。原因遺伝子は、他にPSEN2やAPPなどがあります。こうした遺伝子が見つかれば病気を特定できます。
一方、アルツハイマー病の大半を占め、家族に複数の患者がいない孤発性タイプは、原因遺伝子などが明確ではありません。病気かどうかは認知機能検査や脳の萎縮などから調べるのが一般的です。
原因ははっきりしない孤発性にも、複数の遺伝子が関与していることが分かってきています。1つの遺伝子ではなく、複数の遺伝子の変化が積み重なると、発症に至る可能性が高まります。アルツハイマー病全体で発症に関わる遺伝子は、数十~数百個あると考えられています。ゲノム医療で多数の遺伝子を調べたデータをAIで分析すれば、発症リスクが分かる可能性も出てきます。

 

(2021年4月19日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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