認知症の高齢者は、2022年時点で443万人、2040年には584万人に達すると推計されています。認知症の最大の原因はアルツハイマー病で、全体の6~7割を占めています。このアルツハイマー型認知症は根本的に治すこと困難ですが、治療で進行をゆるやかにすることが期待できます。
予防では、英医学誌ランセットの専門家委員会が昨夏に公表した報告書が注目されています。難聴や喫煙、社会的孤立など14項目のリスク要因を取り除くことで、または進行を遅らせる可能性があるとしています。
生活改善は、アルツハイマー病の進行を防ぐためにも大切です。脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病や、うつの治療をすること、難聴ならば補聴器をつけることなどは、進行抑制にも効果的と考えられています。たばこやアルコールなど嗜好品との付き合い方は見直し、一方で人や社会との交わりは可能な限り維持すべきです。
早期診断をすることで、医療者や周りの人ができることは増えてきています。治療方法や予防の考え方を生かしながら、認知症になっても人生を充実させることはできます。

(2025年9月21日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)