論文の大量生産

実験せずに研究をしたことにして科学論文を量産する「論文工場」が、中国にあるのではないかとの指摘がなされています。米国スタンフォード大学の研究者らは、不自然な点がある400本以上の論文リストをネットで公開しています。著者のほとんどが中国の市民病院や大学病院に所属する医師で、著名な学術誌に載った論文もみられます。米科学誌サイエンスは、2013年に準備された論文を研究者が購入するブラックマーケットがあるとする記事を掲載しています。中国の病院では、一定の地位に昇進するのに著名な学術誌に論文が掲載されたという実績が必要で、研究する時間がない医師たちが論文を買っている可能性を指摘しています。
2018~2019年には、豪州の研究者や編集者らが、論文工場からの論文が量産されるようになっていると報告しています。この研究者たちは、今年1月に分子生物学の専門誌で、論文工場の論文の特徴も詳報しています。小さなものも含めると、不正は膨大な数になると思われます。学術誌は研究者にデータの公表を求めることが必要になりますが、それが研究結果の再現性と科学に対する信頼を高めることにつながります。

(2020年4月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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