法律には2種類あります。中央省庁を中心とした政府が作る閣法と、国会議員がまとめた議員立法です。議員立法は、2016~2019年に計617本が提出されましたが、成立は101本どまりです。与野党の賛成が見込めないと審議しない慣例が影響しています。閣法は同時期に300本提出され、299本が成立しました。数で圧倒する閣法は、年金や教育、税など国の根幹を担っています。しかし、議員立法は近年、独自の地位を築きつつあります。
議員立法の乱用を防ぐ狙いから、1955年の国会法改正で、法案の提出には発議者以外に衆議院では20人以上、参議院は10人以上の賛成者が必要となりました。予算関連法案ならば、衆議院50人以上、参議院20人以上とハードルが上がります。衆議院では法案への賛成者が規定の人数を超えても、所属会派の承認がないと法案を提出できないという慣例もあります。
社会の価値観に関わるこうした法律は、議員立法が多くなります。政府の立場で一律に法的判断を下すことが難しいためです。LGBT(性的少数者)の権利保護、データ社会のルール作りなど、社会の要請はますます多様化、複雑化しています。変化に柔軟な議員立法が、主役級の重みを持つ時代がやってくるかもしれません。
(2020年3月20日 読売新聞)
(吉村 やすのり)