岐阜県で発生した豚コレラの感染拡大が止まりません。養豚場など6カ所で確認され、野生イノシシの感染が隣の愛知県でも見つかっています。豚コレラは、ブタや近縁のイノシシが感染する病気で、ウイルスによって広がります。家畜伝染病で、感染力が強いのですが、感染したブタやイノシシの肉を食べても、人に影響はありません。ウイルスは種の違う生物には感染しにくいことによります。ウイルスは細胞の表面にある受容体と呼ぶ部分にくっついて侵入しますが、この受容体は人とブタでは違っています。しかし、鳥インフルエンザは大量に体内に入ると、人も感染して健康被害をもたらすことがあります。
汚染された豚肉はもちろん、それを加工した餃子やソーセージなどの食品は、加熱が不十分だとウイルスが死にません。観光客が手荷物の中に隠して持ち込んだ後、行楽地などで廃棄し、その残飯を野生イノシシが食べて感染します。畜舎に近づいた際に飼われていたブタなどと接触し、感染が広がった可能性が高いとされています。感染したイノシシの死体や糞に触れたネズミや野鳥などが畜舎に入り、ウイルスを持ち込んだ可能性も指摘されています。
関係者が心配しているのは、より危険なアフリカ豚コレラの侵入です。今流行している豚コレラとは別のウイルスが原因で、人には感染しませんが、ブタはほぼ100%死にます。このほか、ウシやブタなどに感染する口蹄疫は、中国で頻発しています。今春には韓国でも発生が確認されています。鳥インフルエンザは、中国や台湾の農場で毎月のように発生が確認されています。
(2018年12月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)