人生100年時代に向け、長い老後を暮らせる蓄えにあたる資産寿命をどう延ばすかが問題となっています。金融庁の指針案によれば、働き盛りの現役期、定年退職前後、高齢期の三つの時期ごとに、資産寿命の延ばし方の心構えを指摘しています。報告書案によると、年金だけが収入の無職高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)だと、家計収支は平均で月約5万円の赤字となります。蓄えを取り崩しながら20~30年生きるとすれば、現状でも1,300万~2千万円が必要になります。長寿化で、こうした蓄えはもっと多く必要になります。
現役期は、少額からでも資産形成の行動を起こす時期としています。生活資金を預貯金で確保しつつ、長期・分散・積み立て投資を呼びかけています。出産や住宅購入などの生活設計に応じた預貯金の変化や家計収支を「見える化」することが大切としています。
定年退職者のほぼ半数は、退職時点か直前まで退職金額をわかっていません。そのため、退職前後の時期は、退職金がいくらかや使い道などのマネープランの検討を勧めています。高齢期は、資産の計画的な取り崩しを考えるとともに、取引先の金融機関の数を絞ったり、要介護など心身が衰えた場合にお金の管理をだれに任せるかなどを考えたりしておくことを、課題としてあげています。
(2019年5月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)