水蒸気を大量に含んだ湿度ほぼ100%の大気層であるMAUL(モール)は、湿潤絶対不安定層の英語の頭文字をとった言葉で、極めて湿った空気の塊のことを言います。今回の静岡県熱海市で大規模土石流の一因となった豪雨も、MAULが上空に発生していました。
東日本各地に記録的大雨をもたらした2019年10月の台風19号や、熊本県の球磨川が氾濫した昨年7月の豪雨でもモールが発生していました。日本ではまだ一般に知られていない現象ですが、湿潤な日本ではモールは頻繁にできていると考えられています。今後はモールの観測から大雨の範囲を予測できるようになるかもしれません。
(2021年7月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)