中立とは、戦時と平時を問わず、国際社会で外交上、特定の相手に加担しない立場を言います。フィンランドやスウェーデンなどが掲げる中立化は、国の外交方針として宣言した姿勢を指していますが、スイスやオーストリアなどの中立国は、多国間の条約など国際ルールに基づき宣言し、広く承認される必要があります。
オーストリアは、1955年に米国、英国、フランス、ソ連と条約を締結し、永世中立国となりました。トルクメニスタンも中立国として知られています。ハーグ条約に基づき、戦争不参加や自衛の義務、自国領土不可侵の権利を持ちます。将来にわたり自ら戦争を始めず、どんな戦争にも加わらない永世中立国として認められています。
中立国は軍事同盟には加わらず、軍隊を持ち自国を守ります。スイスとオーストリアは、北大西洋条約機構(NATO)の非加盟ですが、軍事面を中心に協力を進める平和のためのパートナーシップという枠組みに入っています。軍事的な中立を掲げてきたフィンランドやスウェーデンが、安全保障政策を転換する議論を始めています。NATO加盟などを検討し、6月のNATO首脳会議までに結論を出すとみられています。ロシアと北欧との緊張が高まるのは確実と思われます。
(2022年4月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)