米起業家イーロン・マスク氏の経営する米スペースXは、衛星通信の打ち上げシェアが6割強に達しています。衛星通信は、地域によって既に速度で地上通信を凌いでいます。スペースXは、自社開発のロケットで一度に最大60基の衛星を打ち上げています。米ハーバード大学の研究者のまとめによると、2023年は6月末時点で1,000基を超え、累計実績は2019年以降で5,000基に迫っています。
衛星通信は、地上ケーブルの敷設を必要としないのが利点です。特に農村など既存の通信インフラが脆弱な地域で潜在的な需要が大きくなっています。宇宙専門の調査会社ユーロコンサルによれば、ユーザー数が2031年に1億5,300万人と、2022年の7,100万人から倍増すると予測しています。先行するスペースXも、安定軌道を探っているのが現状で、米政府の巨額の補助やNASAの大型プロジェクトの発注を受けながら市場を開拓しています。
日本勢は、現状では蚊帳の外です。衛星打ち上げは、年10~20基程度と桁違いの少なさです。通信ビジネスでは、先行する英米勢との協力を深める一方、官民で協力して宇宙ゴミ除去や月面探査などの有力分野にも注力する必要があります。
(2023年7月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)