2019年に施行された働き方改革関連法に伴い、残業時間の上限規制が設けられました。業務の特性などを理由に規制の適用が猶予されていた運転手や医師、建設業などについても、2024年4月から対象となっています。運転手の場合、年960時間が上限となります。
厚生労働省によれば、トラック運転手の年間労働時間は2,500時間超と、全産業平均より2割長くなっていました。残業規制の適用によって、東京―九州間など運転時間の長い長距離輸送を1人の運転手が担うのが難しくなり、物流各社の輸送力が低下し、荷物が運べなくなる懸念は2024年問題と呼ばれていました。
日本経済新聞の分析によれば、運転手に残業規制が適用された4月以降も、長距離トラックの輸送力が落ちていないことが分かりました。東名や名神など8高速道路の主要区間で、4~6月の1日平均の貨物輸送量を試算したところ、前年同期比で0.1%減にとどまっていました。5年前の2019年同期比でも0.6%減でした。1台あたりの走行距離は短くなったものの、大型車にシフトして総量を保っています。運転手不足自体は解消されておらず、地方ではトラック確保が難しい状況も生まれています。
人手不足が進む中、トラック運転手の数を増やすことは困難です。1人あたりの労働時間が短くなっても、物流網を維持する取り組みが求められています。特にトラック1台が運べる量に対し実際に積んだ量を示す積載率は、国内平均で約4割にとどまっており、その向上が課題となります。共同輸送やトラックの大型化で一度に運ぶ荷量を増やすことは効果的な手段とされています。
(2024年10月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)