ニコチン依存症の治療は、2006年度から保険治療になっています。標準的な治療は、12週間に5回通院します。医師から助言を受けるほか、ニコチンの離脱症状を和らげるために、皮膚からニコチンを吸収する貼り薬やガム、飲み薬などの禁煙補助薬を使います。費用は、貼り薬だと自己負担3割で約1万3千円、飲み薬は約2万円です。費用を助成する自治体も増えています。
しかし、厚生労働省の調査によれば、治療開始から1年後の禁煙成功率は、27%に過ぎません。受診回数が多いほど成功率は高い傾向ですが、5回全て受診した人は、全体の約3割にとどまっています。通院を止めて失敗する人も後を絶ちません。厚生労働省は、2017年7月に健保が実施主体となる禁煙外来について、対面診療なしの完全遠隔診療を認めています。しかし、保険はきかず自由診療です。
禁煙外来では、次の診療までに2~4週間の間隔があります。この期間に喫煙してしまう人は少なくありません。禁煙の継続を支援するニコチン依存症向けのアプリが開発され、保険適用を目指す動きも出ています。アプリでは、利用者が衝動や体調、薬の使用状況を入力すると、その内容から学会の指針などに基づき、自動的に助言が表示されます。禁煙補助薬など従来の治療に加え、日常の習慣など心理的な面で患者をサポートするのにアプリが役立ちます。
(2019年3月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)