適応障害の対処と予防

環境の変化になじめず、気分が落ち込んだり、不安になったりすることがあります。ストレスがかかる状況にうまく対応できず、心身のバランスを崩すと、社会生活にも支障を来し、これが適応障害と診断されます。米精神医学会による診断基準によれば、ストレスのかかる状況が始まって3カ月以内に症状が表れ、そのストレスがなくなれば、6カ月以内に改善されるとされています。
抑うつや不安、イライラ、集中力の低下などの精神症状だけでなく、不眠や食欲低下、動悸、腹痛といった体の不調も表れやすくなります。遅刻や欠勤、過度の飲酒など行動の変化を伴う場合もあります。転職や転勤、転校、結婚・離婚、育児、被災、対人関係のトラブルなどに伴うストレスがきっかけとなります。
うつ病は、ストレスだけでなく、性格や体質などの別の要因も関係して発症します。生活や職場の環境を改めたとしても、すぐには良くなりません。うつ病はセロトニンなどの脳の神経伝達物質の減少をはじめ脳の働きに関係するため、回復には時間がかかります。
気分の落ち込みが二週間以上続く場合、心療内科や精神科を受診すべきです。治療に当たってはまず休養を十分取ることが大切です。不眠や抑うつ、強い不安といった症状がみられる場合は、必要に応じて睡眠薬や抗うつ薬、抗不安薬を使うこともあります。同時にストレスのもととなっている環境の改善も必要です。責任感が強く、頑張り過ぎる人は、ストレスがたまりやすいとされています。完璧を求めすぎないように思考・行動を変えていくことも大切です。心理療法やカウンセリング療法が有効です。
コロナ禍ではソーシャルディスタンス(社会的距離)が叫ばれていますが、感染予防に必要なのはフィジカルディスタンス(物理的距離)です。仲間との社会的距離は積極的に縮める努力が必要です。

(2021年7月24日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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