遺伝子治療の研究開発

遺伝子治療は、生まれつき遺伝子の異常で発症する病気の治療法として、1990年に米国で始まりました。遺伝子治療は、病気の治療に使う遺伝子を直接体内に入れる体内遺伝子治療と、患者の細胞を体外に取り出して遺伝子を細胞に組み込んで、患者の体に戻す体外遺伝子治療に大きく分かれます。有効な治療法がないがんや難病の患者で、効果を発揮すると期待されています。日本でも、一部の血液のがん治療用のキムリア、脚などの血管が詰まる慢性動脈閉塞症向けの国産初の遺伝子治療薬コラテジェンが、2019年に相次ぎ遺伝子治療薬が保険診療で使われるようになりました。

キムリアは患者の免疫細胞を体外に取り出した後、ウイルスを利用して細胞に遺伝子を導入し、がんへの攻撃力を高めてから患者に戻しています。この治療法は今のところ、一部の血液がんの患者に限られていますが、食道がんや肺がんなどに適用を拡大する研究も進行中です。遺伝性の難病では、血液を固める血液凝固因子と呼ぶたんぱく質の遺伝子の異常で起きる血友病などの治験が進んでいます。

日本でも遺伝子治療の研究開発は進んでいますが、欧米や中国に大きく水をあけられています。国は、遺伝子治療の研究開発に予算を注入する必要があります。厳しすぎる規制のハードルを引き下げないと、世界から取り残されかねない状況になっています。

(2020年3月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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