遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)

乳がんや卵巣がんの一部には遺伝が強く関係すると考えられるものがあります。中でも多いのが、特定の遺伝子の異常が原因となる遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)です。HBOCの人は、一生で乳がんに罹る確率が、41~90%と通常の6~12倍にもなります。HBOCの約8割が、BRCA1、BRCA2という2つの遺伝子の変異が原因となります。親から子へ50%の確率で受け継がれます。がんの発症は環境などによる要因もあり、乳がんの全てが遺伝性ではありません。年間で約9万人が乳がんと診断されるうち、明らかに遺伝性といえるのは5千人程度です。



遺伝子検査は、主に乳がんや卵巣がん患者の一部が受けます。変異が見つかれば、手術を受けるか検討します。がんができた乳房は全て切除します。もう片方のがんのない乳房や卵巣などの扱いは、医師と相談して決めることになります。がんができていない乳房を切除すれば、乳がんのリスクを9割減らせます。卵巣と卵管を切除すると、卵巣がんのリスクを9割減らせ、生存率も上がります。日本では、高額な費用も遺伝子検査や予防手術の普及の妨げになっています。遺伝子検査は約20万円、手術は卵巣、卵管で70万~80万円、片方の乳房で50万円以上かかります。

(2019年3月11日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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