全国の家庭裁判所が遺産分割に関して受け付けた審判・調停は、2024年に約1万9,600件と、この20年で6割強増えています。遺言がないと相続人同士が分け方を話し合います。しかし、財産を平等に分割するのは困難です。遺言があれば原則、遺言に沿って分けることができ、親の望みなら遺産分割を受け入れやすい面もあります。

公正証書の作成申し込みは公証役場に出向かなくても、メールで申請できます。本人確認は運転免許証や印鑑証明書といった公的書類の代わりに電子署名などで実施します。遺言原本の作成ではウェブ会議を利用できて、遺言者本人と公証人、証人が参加し、公証人が案文を読み上げます。本人が内容を再確認し修正がなければ、公証人が案文をPDF化して画面共有をします。参加者それぞれが電子署名をすると遺言原本が完成します。
遺言を残す人は80歳代など高齢者が中心で、体力の低下や重い病気で外出が難しいケースは少なくありません。判断能力はあっても病院や自宅で終末期療養をしていたり、要介護状態で高齢者向け施設に入居していたりする人はウェブ会議を活用する意義があります。本人が高齢などを理由に出向けない時は公証人が本人の自宅や病院、施設などで対応することも可能です。日当として4時間以内の出張なら1万円、4時間超は2万円が発生します。本人が病気などで日常的にベッドで過ごしている場合は、証書作成料に50%が加算されます。
公正証書遺言の作成件数は、2024年に12万8,000件と4年連続で増え、過去最高を記録しました。相続トラブルを避けたいとの意識が高まっているほか、遺言をつくる人が従来の80歳代から広がっていることが背景にあります。最近目立つのが60歳前後で子どもがいない夫婦が互いに遺言書をつくるケースです。
(2026年1月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)







