中小企業は金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となる経営者保証を求められるケースが多くなっています。倒産して返済ができなくなれば、経営者が企業に代わって返済を求められます。こうした心理的な負担の重さが起業や事業承継の壁になってきています。
中小企業の経営者の高齢化は深刻です。帝国データバンクによれば、2023年12月時点で都内企業の社長の平均年齢は60.0歳です。比較できる過去33年間で最高を更新しています。50歳以上が占める割合は79.6%で、5年前より3.3ポイント高くなっています。
東京商工会議所の調査によれば、東京都内の中小・零細企業で、第三者に事業を引き継ぐケースが増えています。公的機関や金融機関が連携し、新たな経営者が会社の連帯保証人にならなくて済むよう支援するなどの動きが広がっています。背景には、自治体や金融機関に相談窓口などが整備され、民間の仲介会社も増えたことで中小に支援の手が届くようになったことがあります。少子化や価値観の多様化で、家業を継ぐのは当たり前という考え方が薄れたことも影響しています。
中小企業庁によれば、2021年6月時点で都内企業の99%は中小企業が占めています。経営者の高齢化と後継者不足が進む中、事業承継が進まなければ地域経済の土台がゆらぎかねません。支援メニューの充実だけでなく、会社を譲る側と引き継ぐ側が対等な立場で議論を交わし、信頼関係を構築する必要があります。
(2024年12月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)