共働き夫婦のキャリアは、互いに協力し合って築くもので、どちらか一方の仕事の都合を優先する時期は遅かれ早かれ必ず訪れます。夫婦のどちらかが海外赴任する際利用できるのが、配偶者同行休業制度です。この配偶者同行休業制度は、国や自治体、一部の企業で導入されています。2013年成立の関連法では、海外同行時に退職する必要があった公務員について、最長3年の同行後の復帰が可能になっています。
しかし、利用は男女で差があります。人事院のまとめでは、制度を利用した国家公務員累計338人のうち、男性は1割未満です。2018年度は女性が79人で過去最多だった一方、男性は3人でした。男性は、女性の育休や産休のような長期休業の機会が少なく、主夫生活や復職への不安から二の足を踏みがちです。
利用者が女性に偏ると性別役割分業の構造が温存されてしまいます。企業は、休業取得がその後の人事でマイナスにならない対応をすべきです。配偶者の転勤による離職防止に熱心な会社だけが、関連コストを負担するのは公平性に欠けます。企業全体で共働き前提の転勤の在り方を考えることが大切です。
(2021年9月20日 日本経済新聞)
(吉村)