暑さによって農業や建設業は屋外で働けなくなったり、作業のスピードが著しく鈍ったりします。空調が不十分な工場でも仕事がはかどらなくなります。英医学誌のランセットなどの公表によれば、2024年に暑さによって建設や農作業を中断するなどして6,390億時間の労働生産性が失われ、所得の損失は2023年比2割増の1兆900億ドルに上ったとしています。時間の損失も2018年比で約5倍となっています。
熱波による死亡者の急増など温暖化の広範囲な影響が指摘されています。暑さに関連する10万人あたりの死亡率は1990年代以降23%上昇しています。2012年から2021年の間に熱中症など高温に起因する理由で死亡した人の数は、平均で年間約54万人となっています。山火事により発生した微小粒子状物質PM2.5を吸い込むなどして死亡した人も、2024年は約15万人に上っています。
ランセットは、干ばつや大雨などの健康に影響を与える異常気象、感染症、森林破壊などを2015年から追跡して評価しています。化石燃料への継続的かつ過度な依存や気候変動への対策を取らないことで、人々の健康が脅かされており、多くの分野で前例のないレベルに到達しているとしています。今回の報告書の正式名称は、健康と気候変動に関するランセット・カウントダウンと言います。
(2025年10月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)







