虐待などの理由で親と暮らせない子どもを養育する里親制度で、委託解除を巡るトラブルが近年各地で目立っています。国は里親の養育基準を定め、子どもの心身に有害な影響を与える行為を禁じています。児童相談所は、子どもの養育環境のためにやむを得ないと判断すれば委託を解除します。
厚生労働省によれば、親元で暮らせない子どもは約4万2,000人に上ります。国は、2016年の児童福祉法改正で施設から家庭への方針を掲げ、より家庭的な環境の里親への委託を推進してきました。その里親制度は、児童福祉法に基づき、親元で暮らせない原則18歳未満の子どもを自宅で預かる制度です。その結果、2020年度末の里親への委託児童は7,707人で、10年間で1.8倍に増えました。
一方、委託を解除され、別の里親の元や施設などに措置変更される子どもは、年400~500人に上ります。里親が児童相談所の判断に納得できず、異議を唱えるケースが近年各地で目立っています。子どもと引き離された里親のショックは想像に難しくなく、生活環境が変わる子どもの負担も大きいものがあります。
保護された子どものうち里親家庭などで暮らす子どもの割合は、8割に上る米国など欧米と比べて低く、伸びたとは言え2割程度です。日本の児童相談所は慢性的な人手不足で、海外に比べると里親を十分に支援できていません。里親委託を増やすため、民間が手厚く支援し、不幸な委託解除を減らしていくことが重要です。
(2022年10月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)