里親制度の必要性

虐待などの理由で公的責任で社会的に養護されている子どもは、約4万5千人にも達しています。そのうち里親やファミリーホームなど家庭的な環境で生活するのは約8千人で、10年前の約2倍に増加しています。2016年に改正された児童福祉法に、家庭養育優先原則が記され、家庭で暮らせない場合は里親養育が望ましいと国が進めていることも影響しています。
子どもにとっては、一つ屋根の下で特定の大人と愛着関係をもつことは極めて重要です。愛着関係は人との信頼関係を築く基礎になり、その子の将来に大きく影響します。しかし、里親制度はあまり知られていません。里親には手当や子どもの生活費が出ますし、数日から成人するまでなど期間もさまざまです。里親になるには研修を受ける必要がありますが、独身や性的少数者、年齢などは欠格事由になっていません。
実親との交流が見込めない場合は早く特別養子縁組を進め、そうでない場合はショートステイのような里親の使い方も考える必要性があります。学校区に里親を増やし、子どもを実親と切り離さずに親も支援する方向で、柔軟に里親を活用していくべきです。里親制度は遠いもののように思うかもしれませんが、病気や事故で自分が子どもを預ける側になるかもしれません。安心して預ける、預かるということが、子育てと同じぐらいあたり前になっていくことが大切です。

(2021年5月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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