重度肥満に対する外科手術

重度肥満症の人に対して、最近では腹腔鏡下の外科手術で胃を切除することがあります。この腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は、2014年に保険が適用されています。患者は①BMIが35以上の高度肥満、②半年以上の内科的治療でも減量効果がない、③糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症のうち1つ以上を合併している必要があります。BMI35未満の人なども手術を受けられますが、自由診療となります。国内の肥満症の手術は、この方式以外も含め2018年に600例以上実施されています。腹腔鏡下スリーブ状胃切除術では胃の約80%を切除します。残す部分は約100ccとバナナ1本程度の大きさです。食事の摂取量を制限して、体内に入るエネルギーを減らします。患者は手術後、少し食べれば満腹になってしまいます。
現代人は太り過ぎが問題になっており、糖尿病など様々な病気のリスクを高めています。日本ではBMI25以上が肥満に分類されます。国の調査では、国内で糖尿病が強く疑われる患者は推計約1,000万人、予備軍も同1,000万人います。最近の調査では、高度肥満の糖尿病患者は国内で推計30万人おり、このうち約3万人は、肥満の外科手術を必要としているとされています。米国チームの研究によれば、手術を受けた人で12年後に糖尿病だったのは3%が、受けなかった人は26%が糖尿病であったと報告されています。
肥満症の手術は、内科や外科だけでなく精神科医、臨床心理士、管理栄養士、健康運動指導士、看護師などがチームを組み、多方面から患者に対応することが大切となります。患者は体も心も問題を抱えています。物理的に食べられなくなることや、減量に伴う心理面の変化に耐えられるかなどを観察することも大切です。重い精神疾患がある場合、その治療をしてから手術に進むことが必要となることもあります。手術後も含め患者の長期フォローアップ態勢を作ることも大切です。

 

(2019年4月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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