主にマダニが媒介する感染症、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)が過去最多のペースで増加しています。SFTSは、SFTSウイルスを保有するマダニにかまれることで感染するダニ媒介感染症です。感染すると6~14日の潜伏期間のあと、発熱や倦怠感、下痢や嘔吐など風邪や熱中症に似た症状が出ます。致死率は最大で3割と高く、愛知や三重、静岡など複数の県で死亡例が報告されています。
感染を予防するためには、①マダニに噛まれない、②感染した動物に接触しない、この2つが大切です。野外では腕・足・首など肌の露出を避けることが必要です。マダニは移動能力に乏しいため、鹿や狸、アライグマなどの野生動物に付着して広がります。人間と野生動物の生活圏が重なるようになり、マダニが人の生活圏に運ばれています。マダニは春から秋にかけて活動が盛んになりますが、近年は温暖化の影響で活動できる期間が長くなっています。
SFTSで注意するべき点は、感染した猫や犬といった動物を通じた感染です。特に注意が必要なのは猫です。犬のおよそ15倍に上ります。猫の致死率は60%と人よりも高く、感染予防のため猫を屋外に出さないことを推奨されています。
(2025年8月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)