重複がんは、多重がんとも呼ばれ、同じ人の異なる部位に発生するがんのことを言います。複数のがんが同時に起きることも、違う時期に発生することもあります。しかし、肺がんが脳に転移したといった場合は重複がんではなく、同一のがんと判断されます。肺、大腸がんや胃がんは日本人に多く、そのため、同時に前後してがんが発症しやすく、重複がんとなりやすいとされています。10~25%に発症すると考えられており、生まれつきの遺伝子の特徴が原因で、重複がんが生じることもあります。典型的なのが遺伝性の乳がんと卵巣がんです。
重複がんを防ぎ、重複がんで亡くならないために、最も効果が見込めるのは一般的ながんの予防と同様、禁煙です。たばこは肺、口やのどなどの頭頸部、食道、胃、肝臓、膵臓、膀胱、子宮頸部のがんにかかるリスクを確実に高めます。喫煙歴のあるがん患者は吸ったことがない人に比べ、次のがんになるリスクが59%高くなります。がんになったとしても、診断されてから早めに禁煙すれば、死亡リスクが下がるとされています。飲酒は食道と大腸、肝臓のがんになるリスクを確実に上げます。国がすすめるがん検診を定期的に受けることも、重複がんで亡くなるのを防ぐのに有効です。
(2019年7月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)