政府の推計によれば、2028年度に鉄道業全体で必要な人員数に対して約1割の1万8,400人の人手不足が生じます。このペースで減少が続く場合、2050年度には2万4,000人足りなくなる見通しです。利用者の減少などで鉄道需要が縮まっても、一定割合の人員不足は避けられない状況です。
JR東日本は、2023年度に地方36路線で757億円の営業赤字を計上しています。JR西日本のローカル線も年230億円規模の赤字です。両社は新幹線の利益などで赤字相殺できますが、過疎化による利用客の減少に直面する地場のローカル鉄道会社は、経営の維持が一層困難になっています。人口が1億人を割り込む2050年代には、運転士不足が要因となって全国各地で鉄道サービスが立ちゆかなくなる可能性もあります。
地方で運転士が足りない要因の一つとして、都市部の大手各社が新型コロナウイルス下で抑制してきた採用を増やしていることが挙げられます。国も担い手確保を後押ししています。国土交通省は、2024年7月に運転免許を取得できる年齢を20歳から18歳に引き下げました。3月には外国人の在留資格の特定技能の対象に鉄道を加えています。すでに運転士を十分に確保できず、減便や運休せざるを得ないローカル線が増えつつあります。地域の足を支えるローカル線維持に向けた改革には、一刻の遅延も許されません。

(2025年4月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)