鎖骨の成長の出生前減速

京都大学の研究チームの発表によれば、出産が近くなると胎児の肩の成長速度が一時的に減少し、出産後には加速に転じることが分かりました。これは、母親の産道を通りやすくするためのヒト独自の進化と考えられています。
頭蓋骨が柔らかく、未発達な状態で生まれるため産道を通りやすいことは既に分かっていました。これは頭蓋骨の応形機能と言います。しかし、出産時に支障がとなりかねない広い肩幅をどう克服しているのかは、これまでよく分かっていませんでした。
チームは、胎児から成人までの81人分の骨格をCTで測定し、肩幅を決める鎖骨の成長速度を分析しました。同様の成長パターンはチンパンジーなどではみられないとされています。肩にこそヒトのユニークさが表れているとも言えます。広い肩幅は、槍を遠くまで投げられるなど狩猟で有利となった一方、出産には不利になったと考えられています。ヒトの分娩での肩甲難産の頻度は、全分娩の1~3%です。肩甲難産を避けるためのヒトの進化とも考えられます。

(2022年4月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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