長時間労働発生のメカニズム

働き方改革が進んでいる企業で働く中間管理職の方が、そうでない企業で働く人に比べて業務の負担感が増しています。一部の特定の優秀な人材に業務量が集中しがちです。スキルが高い社員に残業が集中しています。優秀な部下に優先して仕事を割り振ると答える管理職は6割を超えています。短期的な成果を追求するには、優秀なメンバーに仕事を割り振る方が効率的だからです。
また、職場でまだ働いている人がいると帰りにくいという雰囲気があります。先に帰ってはならないという同調圧力が最も残業に影響していました。こうした同調圧力は若い人ほど感じやすく、20代は50代の2倍近くも帰りにくさを感じています。また上司の残業時間が長くなるほど、上司のマネジメントの質が低いほど、部下の帰りにくさは増していきます。いわゆる感染です。
集中と感染のメカニズムは相互に関連します。優秀な社員は社内で注目されやすく、ロールモデル化しやすい存在です。しかし、そうした社員に仕事が集中し残業が増えると、周りに帰りにくい雰囲気が生じます。また非管理職に仕事を振ることができないために、中間管理職の業務量が増すことも、同じように帰りにくい雰囲気を感染させる悪循環を招きかねません。
長時間労働の生まれにくい組織を目指すには、3つの透明性が求めらると立教大学の中原淳教授は述べておられます。まず業務の透明性で、誰が・いつ・どんな仕事をしているかの情報が社員間で明確になっている状況です。次に時間の透明性で、どこからどこまでが仕事の時間であるか明確にすべきです。3つ目はコミュニケーションの透明性で、言いたいことが言えない職場では感染が起きやすくなります。帰りにくいと思われず風通しが良い職場をいかにつくるかが鍵となります。

(2020年3月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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