長期在任の社外取締役の増加

 上場企業で社外の人物が務める取締役の長期在任が増えています。在任10年以上の社外取締役は、2024年に主要企業で約700人と5年で19%多くなっています。適任の社外人材が不足しています。国内外の投資家などで、経営者との距離が近くなりすぎるとの見方が広がっており、株主総会で反対票が増える恐れがあります。

 海外からの風当たりも強くなっています。議決権行使助言の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズは、2026年から監査に関わる在任12年以上の社外取締役選任に反対推奨する方針です。今後は選任否決リスクも出てきます。独立性を認められる社外取締役が減れば、経営トップ選任への反対も増える恐れがあります。

 社外取締役を交代させたくても適任者がいないことも問題です。投資家は社外取締役のさらなる増員を求めるとみられ、人材ニーズはかなり切迫しています。主要企業の社外取締役のうち、23%は複数社を兼任しています。大企業で社長・会長だった人材の需要が強くなっています。交代が進めば、退任者が別の企業で社外取締役に就任する機会が増えるとの見方があるものの、長期在任者の5割は70歳以上です。円滑な人選ができるかは見通しにくくなっています。

 実績のある経営者が社外取締役になる流れの問題点は役員報酬です。外資系コンサルのウイリス・タワーズワトソンが調べた社外取締役の総報酬の中央値は、日本が1,720万円と、米国の4,350万円や英国の2,260万円に及びません。

(2025年3月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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