医療の治療情報は多くの病院で電子化されていますが、それぞれの病院で仕様が異なっています。特に診療所は、電子カルテの導入率が海外に比べても低く、病院間だけでなく診療所と病院の間で、患者の情報が共有しにくい状態になっています。それぞれの医療機関で重複して検査するなど、医療費の無駄にもなっています。
オンラインで、診療・治療する技術の開発は進んでいますが、原則は対面診療という医療現場の根強い慎重論や反発があります。超高速・大容量の通信技術の発達で、対面に近い形で診療・治療できる技術もあります。しかし、対面より診療報酬が低いなどの制約が残っています。
治療情報の電子化を巡っては、政府は健康診断や介護情報、医療費などの情報と一元化して活用を目指しています。医師だけでなく、患者にとっても利便性が増します。情報の一元化にはマイナンバーの活用が不可欠ですが、個人情報の扱いなどを懸念する声もあり、海外に比べて医療のデジタル化が遅れる要因になっています。
(2022年6月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)