患者自身の間葉系幹細胞を使用して、脊髄損傷の治療を行う再生医療が承認されます。承認されるのは、医療機器大手ニプロと札幌医科大が共同開発したステミラック注です。脊髄を損傷してから約1か月以内に患者の骨髄液を取り、その中に含まれる間葉系幹細胞を培養後、細胞5,000万~2億個を点滴投与します。同大が行った臨床試験では、損傷から約1~2か月後の重症患者13人に投与しました。リハビリを合わせて行うことで手足が完全にまひしていた患者の運動機能がやや回復するなど、12人で症状が改善したとしています。投与した細胞が神経の成長を促すと考えられ、目立った副作用はありませんでした。
部会では、一定の有効性が期待されるとし、追加評価などの条件・期限付きで承認を了承しました。製品化から7年以内に、製品を使った患者90人と、使っていない患者を比べ有効性を評価し、本格承認に向けて再度申請するよう求めています。毎年5,000人が新たに脊髄損傷の患者になると推定されています。リハビリ以外の治療の選択肢ができるのは大きな前進です。脊髄損傷については、慶應義塾大学でもiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った臨床研究を計画しています。
(2018年11月22日 読売新聞)
(吉村 やすのり)