日本経済新聞の調査によれば、首都圏4都県の集中治療室(ICU)など重症者施設を持つ病院の2割で、高度な容体管理を担う専門医がいませんでした。15%の病院は、専門医が1人だけでした。なり手が少ない上に人材が分散し、欧米より現場が手薄になっています。要因は、全身状態を管理する集中治療専門医の不足です。日本は内科や外科など診療科の縦割りが強く、診療科をまたぎ患者も少ない集中治療専門医はなり手が少なくなっています。個別診療科の専門医になることが優先され、技術取得が後回しになっています。
集中治療専門医とは、日本集中治療医学会が認定する資格を持つ専門医のことを言います。主に集中治療室(ICU)で働き、救急外来で処置を受けた後や手術後の容体が変わりやすい重症患者に対応します。呼吸不全や多臓器不全に陥った患者を対象にするため、幅広い知識が必要になります。麻酔科や救急科の専門医があわせて資格を持っていることが多くなっています。
2020年4月時点で1,955人が登録されています。2000年代は600~800人台で推移し、2010年以降に増加ペースは上がってきていますが、まだ欧米と比べ人数が少ない状況です。欧米は集中治療スタッフを豊富に抱え、100床以上のICUを持つ病院が多くなっています。
(2021年1月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)