集団免疫効果とは

新型コロナウイルスの終息には、抗体保有率の上昇が必要であると考えられています。ウイルスなどに感染すると体の中に免疫ができ、再感染はしにくいと考えられています。国や地域などの集団で免疫を持つ人が増えれば、感染者が感染していない人と接触する機会は減ります。その結果、人から人へ感染が連鎖的に広がる状況は起きにくくなり、流行は終息に向かいます。こうした効果を集団免疫と呼びます。
欧州の感染例を参考に、基本再生産数を2.5として感染の広がりを求めると、全体の6割程度の人が免疫力を持てば感染は収まるとされています。しかし、横浜や長崎に停泊したクルーズ船においては、2割の人の感染が起こり、感染者の割合は6割に届かなくても流行が終息した可能性があります。今回のコロナ禍での世界各国における抗体保有率をみると、米国でも13.4%、感染拡大しながらもロックダウンしないで集団免疫によって流行の終息を目指したスウェーデンでも10%です。
スウェーデンのストックホルム大学などは、免疫を持つ人が4割程度で集団免疫が獲得できるとの試算をまとめています。英オックスフォード大学などのグループは、人口の1~2割が感染するだけで流行が拡大せず終息に向かうとしています。感染しやすさや接触頻度がばらつけば、感染は広がりにくいとしています。感染者でも免疫が長期にわたり保たれず、集団免疫は期待しにくいとの指摘もあります。いずれにしても、集団免疫の推定を巡る研究は、実際の社会で実証されておらず、今後の検証課題です。感染者の免疫が長期に続くとしても、集団免疫はすぐには期待できない状況です。

(2020年6月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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