雇用調整助成金は、企業が従業員に払う休業手当の費用を補助する制度です。仕事が減っても働き手を解雇せず、雇用を維持してもらう狙いがあります。もともと1人あたりの日額上限は約8,300円でしたが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う特例措置として2020年から助成内容を拡充しています。今は原則として日額上限を1万3,500円、助成率を最大10分の9とし、売り上げが大幅に落ちこむ企業などには1万5千円、最大10分の10を支給しています。
新型コロナの影響による支給決定額は、2020年3月~2021年7月23日時点の累計で4兆円を超えています。2008年のリーマン・ショック後も特例はありましたが、2009年度の支給は約6,500億円で、今の支給水準は約6倍になっています。労働経済白書によれば雇調金の特例などの効果で、2020年4月~10月の完全失業率は2.6ポイント抑えられています。
特例措置の継続は、成長産業や人手不足の企業への人材移動を阻み、労働者の働く意欲をそぐことにもつながります。厚生労働省は、本来の助成内容に向けて段階的に縮小させる方針でしたが、ほとんど実現できていません。最近は逆に最低賃金を引き上げるための中小企業支援として、年末まで10分の9以上の助成率を維持することなどを打ち出しています。
(2021年7月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)