少量の飲酒であっても、がんをはじめ病気のリスクを高めるとされています。がん予防の観点から言えば、一滴のお酒でもリスクになるというのが国際的な評価です。日本人のがんと飲酒の関係の分析によれば、飲む場合は1日あたりのアルコール摂取量を23g程度までにすることが勧められています。
飲酒が日本人のがん全体のリスクを高めることは、確実と判定され、がんの部位別でも、日本人に多い大腸や肝臓、食道は確実、閉経前の女性の乳がんと男性の胃がんもほぼ確実です。2015年時点の日本人男性のがんの原因で飲酒は8.3%、女性では3.5%と推定され、男女ともに3番目に多くなっています。お酒に弱い人は、強い人に比べてがんのリスクが高くなります。
毎日3合以上の大量飲酒で、酒に強い人は食道がんのリスクが8倍になり、弱い人では50倍にもなっています。がんの部位による違いもありますが、頭頸部や胃のがんリスクも高くなり、飲酒は肝臓の肝炎や脂肪肝、膵臓の膵炎の原因にもなります。心筋梗塞などの冠動脈疾患に対しても飲酒は、リスク因子となります。
がんなど生活習慣病のリスクが高まる純アルコール量は、男性で1日当たり40g以上、女性では同20g以上としています。純アルコール量はお酒の度数で変わり、20gはビールの中瓶1本や日本酒の1合にほぼ相当します。最近は純アルコール量を表示する飲料も増えてきています。350㎖缶で度数5%のビールは14gですが、同9%のストロング系チューハイは25.2gにもなります。
(2023年7月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)