骨粗しょう症は、骨の量が減少したり、質が劣化したりすることで、骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気です。骨は新陳代謝を繰り返しています。破骨細胞が古い骨を壊す骨吸収と、骨芽細胞が新しい骨を作る骨形成のバランスがとれていると、丈夫な骨が保たれます。しかし、加齢や生活習慣などでそのバランスが崩れると、骨が過剰に溶けて量が減るなどして、もろくなってしまいます。
日本の骨粗しょう症の患者数は、約1,280万人推定されています。女性が約8割を占めています。女性が多いのは閉経により、骨を壊す破骨細胞の働きを抑える女性ホルモンのエストロゲンの分泌が急激に低下することが大きな要因となっています。
一方、男性患者は約300万人で、少ないように思われていますが、約半数は何らかの病気に起因する続発性骨粗しょう症です。高血圧や糖尿病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病などの生活習慣病がある人は、骨量の指標となる骨密度がある程度維持できていても、骨質の劣化の影響で骨折するリスクが高まります。
女性は40歳以上、男性は60歳以上になったら、自治体の骨粗しょう症検診や人間ドックなどで定期的に骨密度検査を受けてみるべきです。生活習慣病がある人は、骨粗しょう症の早期発見のために、一度は骨の精密検査を受けておくことが大切です。
予防対策の基本は、日光浴、運動、食事が3本柱です。日光浴は、骨に必要なカルシウムの吸収を助けるビタミンDの体内合成を活性化します。骨に重力をかける運動を習慣化することも大切です。日中に運動を兼ねて20分程度の散歩をする、ベランダや庭で日光を浴びることが有効です。筋肉も強化できるスクワット運動も必要です。
食事はカルシウムだけでなく、カルシウムの吸収や骨への沈着を高めるビタミンDやビタミンK、筋肉や骨の材料になるたんぱく質などもバランス良くとることが大切です。魚や肉、乳製品、大豆製品、野菜をまんべんなく食べることを意識することが必要です。
(2021年3月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)